日本酒を飲んだあと片づけ忘れたコップに、いつの間にかカビがもこもこと生えていた。白に緑に黒、さらには淡いピンクまで。よく見れば、それぞれが小さな陣地を築き、境界線を広げ合っている。ひとつの器の中で繰り広げられる静かな争いだ。

ふとテレビをつければ、自民党の総裁選。候補者たちが並び立ち、党内の支持を取り込みながら勢力図を塗り替えようとしている。言葉や政策が飛び交うその様子は、先ほどのコップの中とどこか重なって見えてしまう。

違うのは、カビの色とりどりの陣取りは放っておけばただ不快な風景になるのに対し、総裁選の行方は国の針路を左右する大きな選択になるということだ。とはいえ、どちらも「放置すれば勝手に広がる」という点では似ているのかもしれない。台所の小さな失敗から、そんなことを考えた。